2.食餌

犬のスローフードは動物性食品

●根拠のない犬の雑食説。犬が雑食ではなく肉食の理由  

多くの専門家が語っている「犬は人間と長くくらしているので雑食になった」には大きな疑問があります。
すべての動物は環境に適応するように進化してきていますが、肉食であった動物が雑食に進化するためには気の遠くなるような時間がかかるのが常です。例えば、雑食の狸は同じイヌ科ですが、犬と同じの祖先にあたる肉食のレプトキオンからタヌキ族が分岐したのは約700万年前です。そこから現在までの間に狸が雑食になったと思われていますから、少なくても数100万年以上もかかっているのです。

犬が人間に飼われてからの時間は諸説ありますが、遺跡からの出土などから長くても1万年前という説が有力のようです。1万年前に飼われた犬の子孫が純粋に続いてきたとは考えられません。近代までの間には、新たに捕獲した狼の加入や野生の狼との自然交配もあったと考えるのが妥当でしょう。現に、モンゴルでは野生の狼を巣から子狼を連れ出して飼うことが勇気の証とされています。これらの事情を加味して進化の時間を概算すると、多くて5千年程度になると思われます。犬が雑食化への進化度をこの数値で計算すると0.1パーセント程度の変化と考えられます。さらに、現在多く飼われている犬種の祖先は、ヨーロッパの狩猟民族が飼っていましたから、その間は肉食で雑食度はさらに低くなります。この数値では狼と犬の変化は個体差の範疇でしかなく、変化は全くしていないと言えるのです。犬の常識で記したようにDNAに変化がないのは当然といえましょう。したがって、狼が肉食なら犬も肉食なのです。



狸は犬と同じ肉食目の祖先から別れたのが700万年前。狸が雑食になるために気の遠くなるような時間を要しているのです

●野生の狼は肉食動物特有の生理機能が
  活性化しているから元気なのです

狼は鹿などの大きい草食動物だけではなく、野ねずみから昆虫、魚まであらゆる動物を補食しています。小さな動物はまるごと、大きい動物は内臓から食べ始めて、すべての部位を食べます。肉食の狼は胃液に含まれる胃酸が人間の20倍と高濃度で分泌するため、骨や軟骨などでも効率良く消化分解できます。また、肉類が持つ尿酸や尿素といった毒素を短時間で排出する必要性から腸は極端に短いのです。

狼が食べていたものを分析してみると、驚くほどバランスのとれた食生活を送っています。内臓にはミネラルやビタミン類、革や骨にはカルシウムにリン、さらにコラーゲンやコンドロイチンなど豊富なアミノ酸類から、筋肉やエネルギー源として必須のタンパク質が豊富に含まれています。必須脂肪酸やミネラル類など植物固有の栄養素だけを取得するために植物の葉類などを少量食べていますが、ビタミンCなどは腸内バクテリアが合成。いわば自製もしているのです。したがって肉食専用の優れた栄養取得システムが確立されているのです。

消化の良い肉食をしている狼は、消化の悪い植物からエネルギー源などの主要栄養素を効率良く取得できる構造にはなっていません。この構造は犬も同じなのです。構造から見れば、人間に飼われるようになった狼の名称を犬と変えたに過ぎないのです。

●肉食動物にとって菜食はアンチスローフードです

最近は犬もスローフード※ブームがおきています。かぼちゃのパンケーキ、おからのチャーハン、野菜ビスケット…。野菜や果実を使ったメニューは見た目にもきれいで健康に良さそうです。これを犬のスローフードと称して与えていますが、大きな勘違いをしているのです。これらはウサギやヤギたちが喜ぶ草食動物の食餌で、肉食動物の食餌ではないということです。このメニューを野生の狼やライオンが食べるととすれば、干ばつなどで草食動物が減少するなど、飢餓状態になった時だけです。充分に動物の獲物が存在すれば決して食べることはないでしょう。肉食動物の消化器系器官では植物性の食物を効率良く分解吸収できないことを身体が知っているからです。

犬の立場は飢餓状態になった肉食動物の状況と似ています。本来食べない植物性の食品でも飢えを凌ぐために食べるているのです。試しにオカラクッキーと肉の両方を同時に与えて見ればわかります。身体にあった食べ物が何であるかを瞬時に判断します。植物性の食品に動物性の香りや風味を加味しても、本来の食餌ではないことを本能に記憶されているからです。



ライオンも草食に不向きな消化器系器官しか持っていません

●犬のスローフードは動物性食品

肉食構造の犬は肉食が健康で長生きの源です 犬の身体構造は完璧な肉食で、雑食と言うのは人間の都合でさせられているだけでなのです。穀類をすりつぶせない臼歯に、植物の栄養を分解するには短すぎる腸、どこをとっても草食には不都合な身体がイヌ属の狼と犬なのです。

犬と人間のヘルシーな食品は反対になります。人間(ホモサピエンス)は霊長目に属する雑食性の動物ですが、歯の形態を見ればわかるように霊長目に分岐前の時代までは草食性の動物です。したがって人間は草食性の雑食動物と言うことになり、植物性の食品がヘルシーな食品といわれる所以です。

一方、肉食専門の機能しか持ってない犬が植物中心の食餌をしていると、生命活動のシステムに狂いが生じてしまい、重大な弊害が発生してしまうのです。犬にとって生命活動の根源となっているのは動物性のタンパク質なのです。犬は雑食ではなく肉食だと言う認識を改めて持ってください。犬のスローフードは肉食なのです。



犬のスローフードは動物性食材

 

ドライドッグフードを主体とした食餌の問題点

良く言われることに「ドッグフードには何が入っているのか不安」「農薬や化学物質が混入していないか」など素材の汚染が話題になっていますが、協会加盟の日本製であれば大きな問題はないようです。問題なのはドッグフードの主成分が草食動物仕様になっていて、これを主食としていることが問題点なのです。

現在広く普及しているドライのドックフードの成分は麦、コーン、大豆、などの穀類が約50パーセント前後を占めるなど植物性の素材が主体で、鶏、羊、豚などの肉類は20パーセント以下にとどまっています。一部、肉主体と明記しているドッグフードでも動物性素材は30パーセント程度。栄養のバランスをとるためのミネラルやビタミンなど栄養強化成分を添加されている配合が一般的なドッグフードの成分で、エネルギー源となっている主成分は穀類のデンプンです。デンプンを加熱処理して分解しやすいアルファー化、粉砕して微粒子化するなど、消化吸収を良くするための対策がとられています。犬は穀類の消化吸収効率が極端に悪いことへの対応で、高級品ほど消化吸収性の良さをアピールしています。

消化吸収性を高めることは犬に優しい食品に思えますが、本来、穀類のデンプンを必要としていない犬に与えることに矛盾があるのです。植物性主体の食餌を続けると、肉食の生理機能を持つ犬は生命活動のシステムに狂いが生じてしまいます。特に運動をする犬への影響は大きく、重大な弊害が発生してしまいます。



ドライドッグフードの主成分は肉食動物が消化できない穀類。これが大きな問題なのです

●ドックフードが消化吸収しやすい構造になっているための弊害

  • 歯や顎のぜい弱化/ハードタイプでも簡単に砕ける構造から、犬は噛み砕く作 業が簡略化されてしまうため歯や顎の構造がぜい弱になってしまい、骨など堅いものを与えた場合、良く砕くことがでず消化不良を招くようになってしまいます。犬に近いハイエナの噛み砕く力は450キログラムと、動物界ナンバー2の強さがあるのです。
  • 消化器系の機能低下/本来犬の胃は動物の骨や軟骨を消化する胃酸を大量に分泌できる潜在能力があるのですが、消化が良すぎるドッグフードだけを食べていると、胃液が少なくなるなど消化器系の機能が低下してしまいます。消化器系は生命活動の入口ですから、すべての機能に悪影響を与えてしまいます。

●ドッグフードの成分が高デンプン低タンパクの弊害

  • 肥満になりやすい/腸に入ったデンプンはブドウ糖に効率良く分解される構造 ですから、大量のブドウ糖が生成されます。ブドウ糖は血液を通じて筋肉や臓器にエネルギーとして渡りますが、分解効率の良さから消費されない余剰なブドウ糖が大量に発生してしまいます。消費されないブドウ糖は、脂肪として体内に貯えられますから肥満の大きな原因となるのです。
    イヌ科の動物のエネルギー取得方法は、デンプンではなくタンパク質で、複雑な機能を介してブドウ糖に分解しています。その機能から必要なエネルギー分しか分解しませんから脂肪になる比率が低いのです。
  • タンパク質分解の能力低下/離乳後から高デンプン低タンパク質のフードで育つと腎臓機能のひとつ、肉類などタンパク質に含まれる余分な窒素を尿素として体外に輩出する能力が低下してしまう結果、タンパク質の分解量に制限ができてしまいます。このためドッグフードにはタンパク質が20パーセント前後という低い量しか配合することができないのです。
    細胞代謝が人間より遥かに高い犬は、タンパク質を大量に必要としています。特に運動する犬は人間の8倍から10倍のタンパク質を消費しますから、少ないと細胞代謝に遅れが発生し、生命活動そのものに弊害をあたえます。タンパク質を制限したフードの推奨は本末転倒といえるのです。消化吸収の良いフードは長く生きたい犬にとってありがた迷惑な存在なのです。

●同じものを食べ続ける弊害

自然界の狼は毎日同じものは食べていません。鹿のように大きい動物から野ねずみや昆虫など、その日に補足できた動物と少量の植物を摂取しています。当然、毎日同じものを食べることは物理的にもありえないのです。

現在の犬のほとんどが同じドッグフードを毎日食べています。犬が野生であった時代は狼ですから狼と比較してみると、ドッグフードは桁違いに少ない種類の素材しか配合されていません。

多種多様な食物は生命活動に必要な栄養素をまんべんなく摂取する役目とは別に、消化分解するための多様な酵素や善玉菌を増やす効果があり、消化吸収の能力を高めるのです。野菜などの植物には進化の過程で微量ながら有毒とされる物質も存在、生の食材にはバクテリアなどの微生物も含まれています。これら有害と思われていた物質も、身体のメカニズムを有効に働かせるには必要な物質なのです。細菌が出す毒素エンドキシンが免疫機能を高める大切な役目をしていることも近年わかってきました。アレルギー体質はこれらの不足や過度の潔癖からともいわれています。また、同じドッグフードだけで生活していると特定の食べ物しか対応できなくなり、食物アレルギーの遠因にもなるのです。犬に食べさせてはいけないと言われる、玉ねぎやニンニクも少量を摂取すると、アレルギー対策に有効と思われているのです。

植物中心の雑食は寿命を縮めてしまいます

●内臓疾患になるリスクが高くなります

前記のように、消化しやすくした穀類を中心にした食餌で育つと、肉食動物特有の内臓機能が良好に働かないで成長してしまいます。成長期までの内臓器官は、成長ホルモンの影響で形状的には生成されますが、肉や骨を砕く歯や顎、確実に消化する大量の胃酸分泌、タンパク質の分解と言った機能が封印された状態になることです。成犬になると、成長ホルモンの分泌低下と連動して内臓器官自体は衰退を開始、さらに機能が低下するとともには退化してしまうのです。このため6〜8歳になると内臓疾患にかかるリスクが高くなってしまうのです。突然、食欲をなくし短期間で死亡するケースなどで多いのが臓器不全で、その遠因となりかねないのです。映画「マーリー」のマーリー君の病名は腸捻転でした。以外と多い腸捻転は腸の機能低下が大きな原因で、マーリーもドライドッグフード中心でくらしていたようです。

●長寿遺伝子の活性化を阻害します

遺伝子の研究から1997年に寿命に関わる長寿遺伝子が発見されました。この遺伝子の仕組みも徐々に解明され、遺伝子が活性化すると寿命が長くなることがわかってきました。低カロリーが遺伝子を刺激して活性化するそうです。その逆がカロリーの過剰摂取と言うことになりますから、ブドウ糖になりやすい穀類の摂取は長寿と逆行することになるのです。

また、長寿遺伝子は細胞を修復するタンパク質の活性化を助ける働きがあるそうですから、高カロリーは細胞代謝を大きく阻害することになり、負の連鎖を招いてしまいます。

●コラーゲンをはじめとする関節構成物質の不足が招く障害

良く遊び良く運動をする犬が6〜8歳になると関節に障害が出て、運動ができなくなる事例が多く見受けられます。障害が進行すると歩行もできなくなり、やがて全身が衰弱して短命に終わるケースです。

原因の多くは植物性を主体とした食餌によるコラーゲンなど、関節を構成する栄養素の不足です。成長期の犬は成長ホルモンの影響でコラーゲンを合成することができますが、加齢とともに合成ができなくなってゆきます。狼が内臓を最初に食べる理由がここにあるのです。コラーゲンをはじめ関節構成物質が内臓や皮膚、軟骨などに多く含まれているからです。

 

肉食中心にすると多くのメリットが生まれます

●皮膚のトラブルを防ぎ毛に艶がでます

内臓や軟骨を中心とした肉食にすると、皮膚の主要構成物質であるコラーゲンをより多く摂取できます。充分な補給は細胞代謝を促進させますから、皮膚は健康になりトラブルを起す確率が大きく低下します。さらに生理機能も活性化してアトピー性皮膚炎になりずらい体質になります。また、皮毛もコラーゲンで構成されていますから皮毛本体も健康になり、毛質は内部から向上するので、トリートメントの必要もなく見事な光沢を得ることができるのです。皮膚と皮毛が健康で強くなると、人間用のシャンプーが使用でき、愛犬と香りの共有も可能になるのです。

●おねだりや拾い食いがなくなります

犬の拾い食いは恥ずかしいだけではなく危険な異物を食べる恐れがあります。

また、ダイニングのディナーを台なしにしたり、来客のおもてなしを横取りする問題行動は困りものです。この行動の根底にあるのが、肉食動物としての満足度で、デンプンを主体とした食餌では充分な満足が得られないためです。それは肉食の生理機能が働かないために、空腹感が消えないからです。肉食にすると本能的に満足感が得られますから、問題行動が起きないのです。お腹が満足した野生の肉食獣が獲物を襲わないのはこれが理由なのです。
胃腸系が強化され、体臭もさらに低下します。

肉食にすると肉食の生理機能が活性化して強力な胃酸が出るようになり、堅い骨でも簡単に消化するため、短い腸の特性から急速に栄養素を吸収するとともに、有害な毒素は素早く輩出します。このため腐敗した物や異物を誤って食べても、急速に輩出するため大事に至らなないのです。犬に近いハイエナは犬と同じシステムの生理機能を持っていますから、腐敗した肉を日常的に食べることもできるのです。
強力な輩出機能は消化できない物を腐敗をおこす前に輩出しますから、嫌な体臭の元凶である硫化水素などは発生しません。このシステムは運動することで、さらに推進されるのです。

●肉食は肥満を防ぎます

使わないエネルギーを脂肪として貯えてしまうのが肥満の原因です。タンパク
質を分解してエネルギー源とする肉食の生理機能は、ブドウ糖を必要量しか生成しないため肥満になりにくいのです。しかも、肉食には直接ブドウ糖に変わるデンプン質がありません。

●癌になる確率が低下します

近年、癌にかかる犬が増加しています。正確な統計はありませんが、昔は癌にかかるケースは現在より遥かに少なかったようです。原因として想像されるのが植物性を中心にした食餌にも一因があるようです。

植物性の食餌では肉食用の生理機能が不活性になり細胞代謝も遅れます。生理機能の活性には食餌のほかに運動の量も関連しているので、犬が番犬の時代はこれらの要件が現在より満たされていました。昔は癌にかかる確率が低かった大きな理由がここにあると思われます。本書の調査でも、肉食で運動をしている犬ほど癌にかかる確率が低い値を示しているので、肉食は癌の予防にななると想像されるのです。

※ 肉食のレシピや手作り方法、給餌量など詳しくは書籍「ワンちゃんの長寿化マニュアル」い掲載されています。

犬には羊のように長い腸も効率の良い臼歯もないのです

 

 

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