勘違い

誤解している犬の寿命。
犬はずっと長寿のはずなのです。

犬の生理的寿命
(理論的寿命)
(人間との年齢対比)
生理的寿命ではミニチュアも超大型犬も基本的に同じ寿命になります。

人間
1年 12歳
2年 17歳
3年 21歳
4年 24.5歳
5年 28歳
6年 31.5歳
7年 35歳
8年 38.5歳
9年 42歳
10年 45.5歳
11年 49歳
12年 52.5歳
13年 56歳
14年 59.5歳
15年 63歳
16年 66.5歳
17年 70歳
18年 73.5歳
19年 77歳
20年 80.5歳
21年 84歳
22年 87.5歳
23年 91歳
24年 94.5歳
25年 98歳
26年 101.5歳
27年 104歳
28年 107.5歳

現在の犬の平均寿命は短命すぎると思いませんか。犬の年齢を人間と比較する目安として小型犬は6倍、大型犬は8倍の早さで年を取っていくとされ、大きさにより7~14歳程度の寿命と見られています。これは家庭で飼われた環境下における生態的寿命のことで、本来持っている寿命の生理的寿命ではありません。動物の生理的寿命を測る基準は生物学者によりさまざまな説がありますが、いずれにしても相当に長寿です。この生理的寿命で現在の寿命を人間に換算すると小型犬が50代、大型犬が40代、超大型では、なんと30代で亡くなっていることになります。

野生における狼の平均寿命(生態的寿命)は7~10歳と言われています。一見短命に思えますが、狼が暮らす自然は外的脅威が極めて高い厳しい環境にいるためなのです。子供の死亡率も高く、狩での怪我や事故も多いなど、良いとは言えない環境では生態的寿命は短いのです。人間で言えば戦乱期に暮らすようなもので、現代でも戦禍を受けているアフリカの国では、日本人の半分以下でしかありません。狼は脅威きびしい環境下で、高齢になっても群れと共に長距離を移動し続ける生活をしながら、25歳を超える長寿も珍しいことではないように、生理的寿命は長いのです。

昔は子犬の死亡率も高く、ジステンパーやフィラリアなど、伝染性の病気で死亡する成犬も多くいましたから平均寿命は短かったはずですが、意外なことに長寿犬も多く見受けれれました。医療体制や予防に対する意識の高い現在、長生きできる犬がなぜか少ないのです。

犬は身体構造から生活習慣まで人間とは大きく違っています。この認識がないまま飼うことに問題があるのです。現在の犬の生態的寿命は残念ながら短いのですが、犬への認識を変えることで生態的寿命を生理的寿命に近付けることが可能なのです

 だれもが「犬は家族の一員、長く一緒に暮らしたい」と思うものです。犬の生理的寿命は20年以上と長いのです。元気で長生きさせるためには犬に対する認識を変えてください。犬を人間と同じように扱うことは精神的には可能でも、身体的には不可能なのです。犬には犬の常識が存在しています。犬の常識を理解して付合うことが、元気で長生きをさせる秘けつなのです。

 

犬は狼の亜種、人間では人種の関係。DNAも同じですから、犬は狼そのものだという認識。

 学術的には、食肉目イヌ科イヌ属に属しているのが犬ですから、タイリクオオカミやシベリアオオカミといった狼とは同一線上の亜種ということになります。人間にも肌が黒いネグロイドやへん平な顔のモンゴロイドから、身体の大きいコーカソイドという亜種が存在しているのと同じことなのです。

亜種ですから犬と狼も共通したDNAを持っていて、基本的な身体構造や機能は同じです。狼を使役として使うために、交配して生まれたのが各犬種です。

反対に犬が野生に戻ったのがオーストラリアにいるディンゴで、移民たちが持ち込んだ犬が野生化したものです。狩の仕方など生態から容姿まで、狼そのものに戻っているのです。同じイヌ科の狐は狼と別れて600万年の歴史があります。犬の歴史はたった1万2000年しか経っていません。犬の進化に必要な時間は限り無くゼロに近いのです。どんな犬種でも生物学や生理学から見れば、狼そのものだという認識をもってください。

 

犬は食肉目に属している肉食獣。
身体構造そのものから肉食獣だという認識。

犬は雑食と思っていませんか。実は人間の都合で雑食にさせられているだけで、ドッグフードが開発される50年前までは肉食が主体だったのです。ほとんどの犬種はヨーロッパ産です。彼らを飼ってきた人間は、狩猟民族であるヨーロッパのひとたちですから、肉を主体とした食事でした。残飯や余り物が餌でも主体は肉食なのです。ほとんどの犬種はドッグフードが開発される以前に確立されていますから、人間のような雑食ではないのです。

犬の身体構造を見れば食肉獣である証は一目瞭然となります。犬の歯は、前端に肉を切り裂く切歯、獲物を倒すための犬歯と続き、奥が臼歯という構成で、臼歯は骨など固いものを砕くための斧の役割をしています。臼歯といっても人間や草食動物とは違い穀類などをすりつぶすための構造にはなっていないのです。これでは植物性の餌を効率よく消化できません。

消化した餌は腸へと導かれ、吸収しやすい構造に合成されます。植物を餌とした場合、植物の基本構成は繊維で構成されています。この繊維は強固な構造のためこのままでは吸収できません。吸収しやすくするためには微生物に分解してもらわなければならないのです。そのため草食動物の腸は長いのです。

 犬の腸を長さを比較してみると人間の2.5分の1、牛の4分の1しかありません。ちなみに狼は3分の1、これは日本人と欧米人の差と同じような比率ですから、基本的には同等といえるでしょう。この長さでは微生物が分解するための時間が足りません。そのかわり肉や骨を消化するために必要な胃酸の量は、人間の20倍も多く分泌されるのです。代表的な雑食の人間と比較しても、犬は雑食の範疇には入らない肉食であることが明白にわかるでしょう。構造的にも機構的にも、犬は食肉獣だという認識を持って下さい。

 

犬は長距離の生涯現役アスリートです。
長時間の心肺運動が必要不可欠と言う認識。

人間や犬などすべての動物は運動することが義務づけられています。動物は種の生活習慣の違いから必要運動量が違ってきます。ネコ科の動物は一定の場所に留まり、待ち伏せをして獲物を捕る習慣を進化の過程で続けてきた結果、俊敏に動くしなやかな体躯に瞬発力を発揮する筋肉を発達させています。俊敏性と瞬発力を優先する生活から、持久力を必要としていませんので、筋肉は速筋を主体に構成されているのです。ネコは瞬発力を発揮できる運動が必要運動ということになり、キヤットランドなどの遊具を使った登ったり飛んだりする運動でよいことになります。以上のことからネコ科の動物は短距離ランナーのため、長い距離を走ったり歩いたりする運動は、さほど必要としていないのです。

これに対して犬科の動物は長距離のマラソンランナーそのものなのです。野生の狼は400平方キロメートル前後という広大なテリトリーを保有しています。皇居を中心にすると北は川口市、南は大森、東は市川市、西は高井戸という広さになります。このエリアを餌となる獲物を求めて1日数10キロから場合によっては100キロ以上も移動します。時速10キロメートル程の速度であれば一昼夜走り続けられるという、最強の持久力を持っているのです。この持久力を維持するため、狼の身体はネコ科の動物とは対照的なシステムが働いています。持久力を発揮するための筋肉は遅筋が主体で、強健な心肺機能がサポートしています。これらを支える肝臓や腎臓などの内臓も強力な能力を持っています。この高度に発達したシステムを維持するためには、豊富な運動量がかかせないのです。動くから維持され、維持するから動けるというメカニズムです。

犬のDNAは狼そのものですからメカニズムも同じです。かわいいヨークシャーテリアも超大型犬のセントバーナードでも同じということなのです。したがってどんな犬でも豊富な運動をしつ続けなければならないという、宿命を背負っているということです。犬は細胞代謝の速度が早い動物ですから、代謝を維持させるために運動は不可欠なのです。運動による刺激がなければ新しい細胞は作られませんから、日常の運動がかかせないのです。しかも犬はマラソンアスリートの身体機構ですから運動量も半端ではありません。犬はマラソンの生涯現役アスリートだという認識を持ってください。

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